とらぞうさん、講演会下書き(1)
虎蔵(とらぞう)さんっていうと、岩美町には、とらぞうさんの功績をたたえる音楽祭があったり、生家の近くには野外音楽堂があったり、一寸法師の館っていうコミュニティ施設があったり、生家跡地には、碑が建てられたりもしています。
岩美町だけじゃなくて、白兎神社の近くにはだいこくさまの碑もありますし、鳥取県民にとっては、岡野貞一さん、永井幸次さんに並ぶ、音楽界の偉人の一人です。
この講演会に先立って、呼び方をどうしようかっていうことを最初考えました。
ふつうなら、先生、田村先生、田村虎蔵先生って言うことになると思うんですけど、ぼくの中ではずっと、とらぞうさんだったので、ちょっとだけ迷って、ある日、生家に行って、手を合わせて心に聞いてみました。
そしたら、音楽は言葉だっちゅう講演をするだけぇ、あんたが言いやすいほうでええだがな。って声が聞こえました。聞こえたのは、とらぞうさんの声だっちゅうことで、ふと我に返って、目が合ったのは、路地にいたトラ猫だったんですが、その時に、よし、とらぞうさんでいこうということにしました。
申し遅れましたが、ぼくは、岩美町田後出身のオカリーナ奏者の岸本みゆうです。
よろしくお願いします(礼)。(盛大な拍手)
とらぞうさんが生まれた馬場っていうところは、それこそ江戸後期から、戦後に至るまで、牛や馬が農家の家族として暮らしていたようなところです。蒲生峠が近く、段々畑や棚田があって、夜になると真っ暗な闇夜に狐が出るようなところです。
とらぞうさんは、そんなところで、農家の三男に生まれて、家の仕事も好きで手伝うような子どもでした。
(つづく)